バイオマスボイラー導入事業においては、近年安定稼働に至っているユーザーは増えてきておりますが、設計時に試算した代替率(バイオマス燃料への燃料切替え率)を達成している現場は極めて少ない状況です。そして代替率が上がらない事によって採算性に大きな影響が出ている現場が少なくないのが実態です。これは既存ボイラーによる熱供給システムとバイオマスボイラーからの熱供給が適合していない事によるものがほとんどです。

弊社の熱需要予測システムは、この不適合部分を改善し、代替率を計画値に近付ける効果が得られる可能性が高い商品となっております。そこで熱需要予測システムの仕組みを簡単に説明します。

 

なぜ代替率が上がらないのか?

バイオマスボイラーの特徴として、急激な熱需要に対する熱供給は困難であると言われています。温熱需要の中で急激な熱需要が発生するものは給湯負荷です。循環昇温(浴槽の管理や暖房など)は朝の立ち上げや湯張り直後以外は、気候や利用者数などにより緩やかな変動をしています。このような緩やかな変動にはバイオマスボイラーは十分な能力を発揮します。しかしながら給湯負荷は、全く負荷のない状態から利用者がお湯を使用した時に一気に負荷が発生します。温浴施設では団体客なども多く、このような時には一時的に負荷が急増します。この時に代替率の減少に陥る要因が隠れています。

給湯用の貯湯タンクへの熱供給の仕組

以下の図は貯湯タンクへの熱供給の仕組みの一例です。貯湯タンクの温度が55℃になると循環ポンプPが起動し熱供給が開始され、65℃になるとポンプが停止して熱供給が停止します。この場合、ポンプが動いたと同時(貯湯タンク温度が55℃)にバイオマスボイラーと既存ボイラーから熱供給が始まります。バイオマスボイラーと既存ボイラーの能力比率に応じて熱供給が行われます。これにより代替率が低下するケースが多くなっています。

上記に対して弊社の熱需要予測システムを利用すると、以下のような仕組みになります。貯湯タンクから熱需要の情報を取り入れ、一定の熱需要を確認した時点で貯湯タンクの温度に関わらず循環ポンプPを起動します。既存ボイラーは貯湯タンク温度が55℃になるまで起動を抑制します。これによって貯湯タンクの温度低下を抑制し、既存ボイラーの起動を抑制する事で代替率を確保します。

ここで既存の仕組みと熱需要予測システムを利用した場合の違いを説明します。以下は1時間毎の熱需要の変化グラフです。このグラフではピーク需要が夕方17時に発生し、約114,000kcal/hの数値を示しています。しかし実際には、1時間の内にも熱需要は刻々と変動しています。拡大したグラフでは15:16に更に需要のピークが発生しています。このような状況で各仕組みにおいて、どのように熱供給が行われるかを検討します。

以下のグラフは従来の仕組みと熱需要予測システムを利用した場合の貯湯タンクの温度変化と各ボイラーからの熱供給量を示しています。まず従来の仕組みでは、熱需要が発生してから貯湯タンク温度が55℃に達するまで既存ボイラーは起動しません。バイオマスボイラーに発生している熱需要は循環昇温(浴槽の加温)に必要な熱供給のみを行っています。貯湯タンク温度が55℃未満になると、バイオマスボイラー及び既存ボイラー(バックアップ)の双方から熱供給が開始され、15:28には65℃に回復しています。しかしながら114,000kcal/hの熱需要に対して、バイオマスボイラーは146,200kcal/hの能力を有しており、1時間単位であれば100%バイオマスボイラーからの熱供給で対応が可能であり、既存ボイラーは稼働しないはずです。実際には、114,000kcal/hの熱需要に対して、バイオマスボイラーから72,000kcal/h、既存ボイラーから42,000kcal/hの熱供給が行われ、代替率は63%まで抑制されてしまいます。

上記に対して弊社の熱需要予測システムの効果を以下に示します。このシステムを利用すると熱需要が発生した時点でバイオマスボイラーからの熱供給が開始されているのがわかります。これによって貯湯タンクの温度低下が抑制され、常時55℃以上を確保している事がわかります。この効果によって、既存ボイラーの稼働が抑制され、代替率は100%を確保する事が可能となります。このようにバイオマスボイラーの導入においては、その特徴をよく理解し、特徴に適合した仕組みを構築する事が非常に重要です。この重要な部分にメスを入れたのが弊社の熱需要予測システムであると言っても過言ではないと考えております。